退職前に有給休暇の取得を申し出たところ、「難しい」「認められない」と言われてしまった――そんなときに、最初に何を確認すればよいのかを整理しました。
有給取得は「難しい」と言われただけで諦めなくてよい
在籍中であれば有給休暇を請求できる、という基本は、退職を控えている場合でも変わりません。そのため、「難しい」と言われたことがそのまま、有給休暇の権利がなくなったことを意味するわけではありません。
とはいえ、実際にどこまで取得できるか、どのように話を進めるのがよいかは、勤務先の考え方や状況によって一律ではありません。感情的に対立するよりも、まずは事実関係を一つずつ確認し、整理することが、遠回りに見えて結果的に近道になります。
「難しい」という言葉には、明確な根拠がある場合もあれば、慣習や現場の空気からとっさに出てくる場合もあります。どちらであっても、まず自分の状況を客観的な事実として整理しておくことが、その後の判断材料になります。
最初に確認する5つのこと
「難しい」と言われたときほど、思い込みで動かず、次の5つを確認しておくことが大切です。
有給休暇の残日数
まずは、自分にどれだけ有給休暇が残っているかを、あらためて確認します。給与明細や勤怠管理システム、人事・総務への照会など、記録として確認できる方法を使い、記憶だけに頼らないようにしておきましょう。付与された時期や消化済みの日数にずれがないかも、あわせて見ておくと安心です。
申請した日と希望日
いつ申請を行ったか、どの日を希望して伝えたかを、時系列で振り返っておきます。口頭だけで伝えていた場合は、メールや書面など、後から見返せる形で残せていたかどうかもあわせて確認してください。日付があいまいなままだと、後の話し合いでも整理がしづらくなります。
退職日
退職日がすでに決まっているか、まだ調整中かによって、有給休暇を配置できる範囲は変わります。退職日が確定している場合、その日を超えて有給休暇を使うことはできないため、退職日の位置づけを正確に把握しておくことが前提になります。退職日が未確定であれば、その旨も含めて状況を整理しておきましょう。
勤務先から言われた理由
「難しい」と言われた際、具体的にどのような理由が示されたかを整理します。人手不足なのか、勤務表がすでに完成しているのか、引き継ぎの都合なのかによって、今後の整理の仕方が変わってきます。理由が複数重なって伝えられている場合は、一つずつ分けて書き出しておくと分かりやすくなります。
就業規則と申請方法
就業規則には、有給休暇の申請方法や手続きの期限が定められていることがあります。自分が定められた手順どおりに申請できていたかどうかも、あわせて確認しておくと状況を整理しやすくなります。手元にない場合は、人事や総務に確認すれば見せてもらえることがほとんどです。
病院が有給取得を難しいと説明する主な理由
病院側から有給取得が難しいと説明される場合、背景にはいくつかの共通したパターンがあります。それぞれの実情を知っておくと、状況を冷静に整理しやすくなります。
人手不足
病棟やクリニックの人員に余裕がないことを理由に挙げられるケースです。人員配置は勤務先側の運営上の課題であり、個人の有給取得を制限してよい理由には直接なりませんが、現場の事情として実際によく挙げられます。人員体制は病棟によって差が大きいため、同じ理由でも状況の深刻さは一律ではありません。
勤務表が完成している
すでに勤務表が組まれた後に申請すると、調整が難しいと説明されることがあります。勤務表の確定時期は勤務先によって異なるため、申請のタイミングと勤務表の作成スケジュールを照らし合わせて確認しておくとよいでしょう。確定前であればまだ調整の余地が残っている場合もあります。
引き継ぎが終わっていない
引き継ぎが済んでいないことを理由に、有給消化を後回しにするよう求められることがあります。引き継ぎへの配慮と、有給休暇を取得する話は、本来別々に整理できる事柄です。可能な範囲で引き継ぎ資料を整えておくと、話し合いが進めやすくなることもあります。
院内の慣習
「これまで誰も全部消化していない」といった、慣習を理由に挙げられることもあります。過去の慣習がどうであったかにかかわらず、自分の残日数や退職日を基準に、あらためて状況を整理してみることが大切です。慣習と、自分に認められている残日数は、切り分けて考えておくとよいでしょう。
時季変更権を理由にされた場合
使用者には、事業の正常な運営が妨げられる場合に限り、有給休暇の取得時期を変更してもらう「時季変更権」が認められています。ただし、退職日が確定している場合、退職日を超えた日へ変更することは想定されていません。
時季変更権を理由に挙げられた場合も、それがどのような事情にもとづくものか、変更先として具体的にどの日が想定されているのかを、落ち着いて確認してみてください。退職日を超える変更先が示されている場合は、そもそも変更のしようがない日程を提示されている可能性もあります。
判断が難しい内容については、自己判断だけで進めず、厚生労働省や労働局の案内もあわせて参考にすることができます。制度の一般的な考え方を知っておくだけでも、話し合いの土台を整えやすくなります。
口頭で拒否された場合に整理しておく内容
面談などの場で口頭のみで「認められない」と伝えられた場合は、後から振り返られるように、日時・伝えられた内容・自分が答えた内容を、メモとして残しておくことをおすすめします。
あわせて、メールや社内システムなど、記録に残る手段で同じ内容を確認できないか、勤務先に依頼してみるのも一つの方法です。口頭だけのやり取りに頼らず、事実関係を確認できる形を少しずつ増やしておくと、その後の整理がしやすくなります。
メモを残す際は、日時・場所・伝えられた内容・自分の応答を、できるだけそのままの言葉で書き留めておくと、後から状況を振り返るときに役立ちます。
一人で判断が難しい場合
残日数や退職日の整理、勤務先とのやり取りの進め方に迷ったときは、一人だけで抱え込む必要はありません。都道府県労働局や総合労働相談コーナーなど、公的な相談窓口を利用する方法もあります。
状況が複雑になっている場合や、話し合いが平行線になっている場合は、専門的な相談先に状況を共有し、次に何を確認すべきかを一緒に整理してもらうことも選択肢の一つです。一人で抱え込んだままにせず、早めに状況を共有しておくことが、結果的に気持ちの負担を軽くすることにもつながります。
「難しい」と言われた直後は、動揺してしまうこともあるかもしれません。ですが、そこで結論を急がず、事実を一つずつ確認していく姿勢が、状況を落ち着いて前に進めるための土台になります。
まとめ
- 「難しい」と言われただけで有給休暇の権利が消えるわけではない
- 残日数・申請日・希望日・退職日をまず整理する
- 勤務先から言われた理由を具体的に把握する
- 時季変更権は退職日を超えた変更を想定していない
- 口頭のやり取りは記録が残る形にしておく
- 判断が難しい場合は一人で抱え込まず相談先を頼る
参考情報
よくある質問
退職前の有給休暇を病院は拒否できますか?
在籍中に請求した有給休暇そのものを、勤務先が一方的に拒否できる権利はありません。ただし取得時期の変更を求められる場合はあり、実際の対応は状況によって異なります。
人手不足を理由に有給を認めないと言われたらどうしますか?
人手不足であることは理由として挙げられやすいものの、それだけで取得自体ができなくなるとは限りません。残日数や退職日を整理し、就業規則や回答内容を確認してみてください。
退職日を過ぎた日に有給を変更されることはありますか?
退職日が確定している場合、退職日を超えた日への変更は基本的に想定されていません。判断に迷う場合は、公的な相談窓口へ確認することもできます。
「難しい」と言われて、対応に迷っていませんか?
有給取得についての考え方は共通していますが、実際にどう対応できるかは、これまでの経緯や勤務先から言われた理由、残日数によって変わります。
自分の場合はどのように整理すればよいか分からないときは、LINEからご相談ください。